多くの人から集めた資金を、金融機関などの専門家が運用を代行する金融商品の中で、投資信託法の下で行政の監督を受けた運用会社によって厳格な管理の下で運営されているものを投資信託といいます。投資信託には、不特定多数の一般投資家に対して幅広く資金を募ることができる公募投信と特定の少人数や適格機関投資家と呼ばれるプロの投資家から資金を募る私募投信があります。
投資信託では複数の投資家から資金を集めるので、①一人ひとりの投資家は少額資金で投資でき、投資信託を通じてまとめられた資金は、②専門家(ファンドマネージャー)が多様な投資先を選定し、③国内外の株式や債券、不動産などの様々な金融商品に分散投資することができます。
投資信託は、運用成果が投資家に帰属しますので、運用成果が出れば、分配金や売却益を受け取ることができますが、預貯金などとは異なり、投資信託では元本が保証されていないので、運用がうまくいかなければ、損をする可能性があります。
多くの投資家から集められた資金は、販売、運用、保管・管理の役割を担う、それぞれ専門家が分担し、より厳正で効率的な運営を実現しています。
投資信託を販売し、資金を集める役割を担うのが銀行や証券会社などに代表される「販売会社」です。販売会社は、投資家の口座を管理し、投資信託の換金、分配金・償還金の支払いなどを行い、投資家が資産運用する際の相談窓口の役割を担います。
そして投資信託に集められた資金(ファンド)をどこに投資するのかを運用指図するのが「投資信託会社」で、「委託会社」や「運用会社」とも呼ばれます。投資信託会社は投資信託運営の中心となる存在で、ファンド企画立案から運用指図、基準価額の計算、運用報告書の作成などを担当します。
ファンドのお金や運用資産はすべて「受託銀行」が保管・管理しており、販売会社や投資信託会社が倒産しても投資家のファンド資産は保護される仕組みになっています。また、受託銀行自身の資産とも区分して管理(分別管理)されており、万が一受託銀行が倒産しても影響を受けることはありません。
ファンドの資産はすべて受託銀行が保管・管理しており、受託銀行自身の資産と明確に区分して管理(分別管理)することが法律上義務づけられています。したがって、万が一受託銀行が破綻したとしても、ファンドに組み入れられる資産が保全されます。
また、投資信託会社や販売会社が破綻した場合でも、ファンドの運用資産は保全され、運用資産が他の投信会社に引き継ぎされる(販売会社の場合は他の販売会社に口座が移管される)か、繰上償還されて資金が投資家に返還されます。
販売会社が破綻しても、販売会社は投資信託を運用していないことから影響を受けることなく、多くの場合は他の販売会社に口座が移管されます。また、特定の販売会社でしか取り扱われていないような投資信託を保有している場合は、投資信託会社と同様、繰上償還の措置がとられるケースもあります。償還されれば、その時点での基準価額で投資資金が返還されます。
投資信託会社が破綻したら、他の投資信託会社に運用を引き継いでもらうか、繰上償還の措置がとられます。償還されれば、その時点での基準価額で投資資金が返還されます。
投資信託会社は投資信託の資産を保有していないので、破綻しても資産は保全されます。
投資信託は、①購入時、②保有期間中、③換金時の3つの段階で、主に①販売手数料、②信託報酬(運用管理費用)、③信託財産留保額の3つの費用がかかります。
販売手数料(購入手数料)は、投資信託の購入時、販売会社に支払う費用になります。信託報酬は、投資信託の運用・管理の費用として、日々信託財産から差し引かれ、投信会社、販売会社、信託銀行に支払われる費用となります。多くは固定された料率が提示されていますが、運用成績や残高等に応じて変動するタイプも増えてきています。
信託財産留保額は、換金時の基準価額(受取金額)から差し引かれる費用ですが、信託財産留保額がかからないファンドや極稀に購入時にかかるファンドもあります。サービスなどの対価として運用会社、販売会社、信託銀行に支払われる費用ではなく、引き続き受益権を保有する受益者と解約者との公平性を保つために、投資信託の資産に支払われる費用となります。
投資家が投資信託(ファンド)を購入するにあたって知っておくべき重要な情報が掲載された資料です。金融商品取引法に基づき、投信会社が作成し、販売会社を通じて投資家に交付することが義務づけられています。
目論見書には「交付目論見書」と「請求目論見書」の2つがあり、「交付目論見書」は投資信託を販売するに際して投資家に交付することが義務づけられています。①ファンドの運用方針、②投資対象、③投資のリスク、④運用実績(新設ファンドを除く)、⑤手続・手数料等の基本的な情報が記載されています。「請求目論見書」は投資家から請求があった場合に交付され、ファンドの沿革や経理状況といった追加的な情報が記載されています。
購入後の投資信託(ファンド)がどのように運用され、その結果どうなったかなどは、決算ごとに作成・送付される「運用報告書」によって確認することができます。
運用報告書は「投資信託法」によって交付が定められた法定開示資料で、原則としてファンドの決算ごとに投信会社によって運用報告書が作成され、販売会社を通じてファンドを保有している投資家(受益者)に交付されます。
運用報告書には、①運用期間中の運用成績、②投資環境に対する見方、③今後の運用方針、④費用の明細等などの情報が記載され、重要な項目が簡潔に記載された「交付運用報告書」と詳細まで記載された「運用報告書(全体版)」に分冊化されています。「交付運用報告書」は作成の都度、受益者に必ず交付されますが、「運用報告書(全体版)」はホームページなど受益者がアクセスしやすい方法で掲示すれば交付したとみなされます。
金融商品取引法は、資本市場の公正化を確保し、投資家保護を目的として、2006年6月に従来の証券取引法が一部改正され、成立した法律です。情報開示(ディスクロージャー)規制、金融商品取引業者に対する規制(販売・勧誘に関するルール)、不公正取引(インサイダー取引等)規制から成り立っています。金融商品、取扱業者によりバラバラであった法体系をできる限り横断的にまとめ、投資家への情報開示ルールを充実、販売・勧誘局面での業者の規制が強化され、違反した場合には法人・個人ともに刑罰、課徴金が課されます。
この法律では、金融商品取引に関する重要なルールが数多く定められており、投資性のある金融商品を取引するときの利用者保護と透明で公正な市場作りが目指されています。また、金融商品を取り扱う業者をすべて「金融商品取引業者」と位置づけて、内閣総理大臣に申請して登録された業者ではないと業務ができないと規定しています。
金融商品取引業者が勧誘・取引にあたって守らなければならない重要なルールとして、「適合性の原則」(誠実公正義務)と「断定的判断の禁止」があります。「適合性の原則」は業者が投資を勧誘するときには、「顧客の知識、経験、財産の状況、取引の目的に照らして、適切な勧誘を行わなければならない」というものです。堅実な投資をしたい投資家にハイリスクな金融商品を紹介することが禁止されています。また、「断定的判断の禁止」は「顧客に強い期待を抱かせるような断定的判断を提供して勧誘してはならない」というルールです。
「金融サービス提供法」は、金融サービスの利用者保護を図るため、金融商品の販売業者に対して販売する金融商品のリスク等に係る重要事項の説明を義務付けた法律です。正式名称を「金融サービスの提供に関する法律」といい、2020年6月に「金融商品の販売等に関する法律(金融商品販売法)」が改正され、名称も新しくなりました。
金融サービスの利用者保護として、勧誘・販売の際には、金融商品の元本割れのリスクなどを顧客に説明することを義務づけるとともに、説明しなかったことにより損害が生じた場合の損害賠償責任を定めています。今までは、損害との因果関係をすべて顧客が立証しなければなりませんでしたが、この法律が制定されたことによって、商品説明の有無の確認さえできれば、因果関係や損害額を立証する必要がなく、顧客側の負担が軽減されています。
また、「金融サービス提供法」改正のポイントとして、新しく金融サービス仲介業が創設されました。これまで、銀行分野には銀行法、証券分野には金融商品取引法、保険分野には保険業法があり、仲介業を行うにはそれぞれの分野で個々に許可または登録を行う必要がありましたが、1つの登録で銀行・証券・保険すべての分野のサービスが仲介可能になりました。